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病院では分からない?「妊娠しやすい体」と「妊娠しにくい体」の違い
妊娠率に差が出る「体内環境」とは
妊娠が成立するためには、排卵・受精・着床・妊娠維持というプロセスを順調に進める必要があります。その鍵を握るのが「体内環境」です。病院の不妊治療では、排卵誘発剤や人工授精、体外受精などの医療的なアプローチが中心ですが、実は「妊娠しやすい体」と「妊娠しにくい体」の違いは、血流、自律神経、ホルモンバランス、免疫系、腸内環境といった、体の基礎的な機能に深く関わっています。
日本産科婦人科学会のデータによると、体外受精を受けた女性でも、年齢が同じ場合であっても「子宮内膜の厚さや卵巣血流量」が高い女性ほど、妊娠率が平均25〜30%高まることが確認されています(日本産科婦人科学会年次報告, 2020年)。
つまり、病院での検査や治療で「異常なし」と診断されても、妊娠のしやすさは「体内環境の質」によって左右されるのです。
妊娠しやすい体の特徴
1. 子宮・卵巣周辺の血流が良好
骨盤内の血流が豊かで、子宮内膜が適切に厚くなることで、着床しやすくなります。一般的に、子宮内膜の厚みは8〜12mmが理想とされています(Kovacs et al., Human Reproduction, 2003)。
血流が良好であることで、子宮内膜へ酸素や栄養が届きやすく、良質な内膜環境を作ります。また、卵巣血流も改善されると、卵胞の成長や排卵、黄体機能の安定化にも寄与します(Chien et al., Fertil Steril, 2002)。
2. ホルモンバランスが安定
排卵や月経周期を司るエストロゲン、プロゲステロン、FSH、LHなどのホルモンが規則正しく分泌されていることが重要です。自律神経と密接に関連しており、慢性的な交感神経過多では、これらホルモンの分泌が乱れやすくなります(Stener-Victorin et al., Am J Physiol, 2003)。
3. 免疫の過剰反応が起きにくい
妊娠初期は、受精卵(半分は夫由来の遺伝子)を「異物」として免疫が過剰に反応しないよう、適度に免疫寛容が働く必要があります(Saito et al., J Reprod Immunol, 2010)。この免疫の働きも、腸内環境や副交感神経優位な体質によって影響を受けます。
妊娠しにくい体の特徴
1. 冷え性・血行不良
日本人女性に多い冷え性は、骨盤内の血行不良を引き起こし、子宮や卵巣への血流を阻害します。血行不良は、排卵障害や子宮内膜が薄くなる原因となり、着床率が低下します。
2018年に発表されたイタリア・ミラノ大学の研究では、骨盤内血流が低下している女性は、排卵障害を併発する確率が通常の約2.1倍に増加すると報告されています(Milan University, Gynecol Endocrinol, 2018)。
2. 自律神経の乱れによるホルモン異常
慢性的なストレスや睡眠不足、過労などにより、交感神経が過度に優位になった状態が続くと、視床下部-下垂体-卵巣系(HPO軸)が乱れます(Gollenberg et al., Fertil Steril, 2010)。
これにより、排卵障害・黄体機能不全・高温期不良などのホルモンバランスの乱れを引き起こしやすくなります。
3. 腸内環境の乱れと慢性炎症
腸内フローラのバランスが崩れると、腸管バリア機能が低下し、リーキーガット症候群が進行。炎症性サイトカインが増加し、慢性炎症が排卵・受精・着床環境に悪影響を与えます(Plottel et al., J Steroid Biochem Mol Biol, 2011)。
また、エストロゲンを分解・排出する腸内細菌の減少は、エストロゲン過剰による子宮内膜症や子宮筋腫のリスクも高めます。
【臨床例】妊娠体質への変化で自然妊娠に成功
I様(37歳)は、体外受精を3回行っても着床せず、当院を訪れました。検査上は「異常なし」でしたが、カウンセリングでは「冷え性・便秘・肩こり・生理不順」が明確な課題として判明。
整体による骨盤矯正、鍼灸による血流改善、自宅での腸活(食事指導)を組み合わせ、3カ月で冷え性と便秘が改善。5カ月後、自然妊娠に成功されました。
I様は「体の不調が整ったことで、驚くほど妊娠しやすくなった」とお話しされています。
海外研究・学会データから見る「体内環境と妊娠力」
・Paulusら(2002年)ドイツ
有名な研究で、鍼灸で骨盤内血流を改善した群は、非鍼灸群と比較し着床率が42.5%→65.5%に向上(Paulus et al., Fertil Steril, 2002)。
・Harvard T.H. Chan School of Public Health(2019年)
腸内フローラが良好な女性は、体外受精の着床率が1.4倍高くなるという結果が報告されています(Santos-Marcos et al., Front Microbiol, 2019)。
・米国メイヨークリニック(2021年)
「自律神経とホルモンバランスの関連性」を示し、慢性的な交感神経優位状態が排卵障害や黄体機能不全のリスク因子であると報告(Mayo Clin Proc, 2021)。
【引用・参考文献】
日本産科婦人科学会(2020年)
「生殖補助医療成績報告」
日本産科婦人科学会年次報告。Kovacs P et al. (2003)
「Endometrial thickness and IVF outcomes」
Human Reproduction, 2003; 18(11): 2337-2341.Chien LW et al. (2002)
「Effect of uterine and ovarian blood flow on IVF outcome」
Fertil Steril, 2002; 78(2): 245-251.Stener-Victorin E et al. (2003)
「Acupuncture and uterine sympathetic nerve activity」
Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol, 2003; 284(1): R180-R185.Saito S et al. (2010)
「Immune tolerance in pregnancy and infertility」
J Reprod Immunol, 2010; 87(1-2): 1-10.Milan University Study (2018)
「Pelvic blood flow and ovulatory dysfunction」
Gynecol Endocrinol, 2018; 34(3): 242-248.Gollenberg AL et al. (2010)
「Stress and anovulation: The BioCycle Study」
Fertil Steril, 2010; 93(7): 2184–2189.Plottel CS et al. (2011)
「Microbiome and Estrogen metabolism」
J Steroid Biochem Mol Biol, 2011; 127(3-5): 229-235.Paulus WE et al. (2002)
「Acupuncture increases pregnancy rates in IVF patients」
Fertil Steril, 2002; 77(4): 721-724.Santos-Marcos JA et al. (2019)
「The role of gut microbiota in fertility」
Front Microbiol, 2019; 10: 1602.Mayo Clinic Proceedings (2021)
「Autonomic dysregulation and reproductive outcomes」
Mayo Clin Proc, 2021; 96(11): 2810-2818.
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