スタッフブログ
筋膜リリースが自律神経に与える相乗効果

「先生、検査では何もないって言われたんです。でも、朝起きた瞬間から肩が重くて、夕方になると頭が締めつけられて、夜になると目が冴えて眠れない」
受付の奥で、そう話してくださった方がいました。手には、何ヶ所か回られたのだろう紙の束。声は落ち着いているのに、肩から上だけが緊張していて、ずっと少しだけ息が浅いままでした。
「気のせいだと思われるのが、いちばんつらくて」
この言葉を、私はこの29年で何度聞いたか分かりません。25万人の方の体に触れてきましたが、こういうお悩みは減るどころか、少しずつ増えている実感があります。今日は「筋膜」と「自律神経」という2つの言葉が、体の中でどうつながっているのかを、私なりに整理してお話しさせてください。

筋膜とは、体を包む一枚のボディスーツ
筋膜は、筋肉を包んでいる薄い膜です。ひとつの筋肉だけを包んでいるのではなく、隣の筋肉、その隣の筋肉へと連続して、体の表面から深いところまで、途切れずにつながっています。全身タイツを一枚着ているようなイメージが近いかもしれません。
タイツの右の裾を引っ張れば、左の肩のあたりまでシワが寄る。筋膜も同じで、ふくらはぎの硬さが背中の張りにつながることも、あごの緊張が首の付け根に出ることもあります。
「肩がつらいのに、なぜ背中や腰を触るんですか」と聞かれることがあります。おっしゃるとおり、不思議に見えると思います。でも、痛みを出している場所と、その状態を作っている場所は、しばしば離れているのです。
筋膜が硬くなると、何が起きるのか
筋膜は水分を多く含んでいて、本来はよく滑ります。同じ姿勢が続いたり、動かす範囲が狭くなったりすると、この滑りが悪くなると考えられています。滑らない布は、動かすたびに引っかかる。その引っかかりが、こわばりや動かしづらさとして感じられます。
ここで大事なのは、筋膜の中に神経の受け手(センサー)がたくさんあるということです。筋膜は、ただの包み紙ではありません。体の状態を脳へ知らせる、感覚の器官でもあります。

自律神経は、体の「アクセル」と「ブレーキ」
自律神経には、交感神経と副交感神経があります。交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキ。日中は交感神経が働いて活動し、夜は副交感神経に切り替わって休む。この切り替えを、私たちは意識せずに行っています。
問題は、アクセルが踏まれっぱなしになったときです。
- 肩と首がすくんで下りてこない
- 呼吸が浅く、胸の上のほうだけで息をしている
- 横になっても頭の中が動き続けて、眠りが浅い
- 朝、寝たはずなのに疲れが残っている
身に覚えのある項目はありましたか。もしあったなら、それは「気のせい」ではなく、体からの知らせだと私は考えています。

筋膜と自律神経が、お互いを引っ張り合う
ここからが、今日いちばんお伝えしたいところです。
緊張が続くと、体はぎゅっと縮こまります。肩が上がり、あごが前に出て、背中が丸くなる。この姿勢が続けば、筋膜の滑りは悪くなります。
そして縮こまった体は、呼吸を浅くします。胸まわりの筋膜が硬いと、肋骨が広がりにくくなるからです。深く吸えなければ、深く吐けません。息を吐くという動作は、ブレーキ側の神経と関わりが深いと言われています。つまり、体が硬いと、休むための機能まで使いにくくなる。
体が硬いから緊張が抜けない。緊張が抜けないから、体が硬くなる。輪になって回り続けます。
だからこそ、この輪はどこからでも断ち切れる、とも言えます。心の持ちようを変えるのは難しくても、体の側から手を入れることはできます。筋膜へのアプローチが自律神経の話とセットで語られるのは、この理由からです。
「どこが悪いのか」より「いつ強くなるのか」
患者様におおむねお聞きしていることがあります。
「その症状は、どんなときに強くなりますか」
朝なのか夕方なのか。仕事の日か休みの日か。人と会った後か、一人でいるときか。この答えの中に、体が何に反応しているのかのヒントが隠れています。原因を一つに決めつけてしまうと、そのヒントを取りこぼしてしまう。私は、決めつけないことのほうを大切にしています。

ご自宅でできるセルフケア3選
道具はほとんど要りません。強く押す必要も、痛みを我慢する必要もありません。むしろ、痛いのに我慢して続けるやり方は、体を守ろうとしてかえって緊張を強めます。「気持ちいい」「ラク」を目印にしてください。
1. 息を吐きながらの肋骨ゆるめ(1〜2分)
椅子に浅く腰かけ、両手を脇腹の下のほう、肋骨の縁に当てます。鼻から4秒かけて吸い、手のひらに肋骨が広がるのを感じます。次に、口から8秒かけて細く吐く。吐くほうを、吸うより長く。これを5回ほど。
胸のあたりの筋膜がゆるむと、吸える量が少しずつ変わってきます。回数より、吐き切ることを目印に。
2. 壁を使った胸まわりの伸ばし(左右30秒ずつ)
壁の横に立ち、ひじを肩の高さで壁につけます。そのまま体を、壁と反対側へゆっくり回していく。胸の前から二の腕にかけて、ふわっと伸びる感じが出るところで止めます。
ここで大事なのは、伸ばしながら普通に呼吸を続けること。息を止めると感じ方が変わります。ピリッとした痛みが走る位置は行き過ぎです。ひとつ手前に戻ってください。
3. 足裏ころがし(左右1分ずつ)
テニスボールか、なければ丸めたタオルを床に置き、足の裏でゆっくり転がします。土踏まず、かかとの手前、指の付け根。体重は半分くらいまで。
「足裏なのに、なぜ」と思われるかもしれません。足の裏からふくらはぎ、太ももの裏、背中へと、筋膜はつながっています。試しに終わったあと、前屈をしてみてください。片方だけ柔らかくなっていることがあります。体はつながっている、という実感が、そこにあります。
3つとも、寝る前がおすすめです。1日で変わるものではありません。2週間ほど続けて、朝の感じがどうか。ご自分で確かめていただくのが、いちばん確かだと思います。

それでも変わらないとき
セルフケアで整う方は、たくさんいらっしゃいます。それで足りるなら、来院いただく必要はありません。
ただ、ご自分では届かない場所、ご自分では気づけない癖というものもあります。ずっと同じ側に重心を乗せている、片方の肩だけ上がっている、無意識に奥歯を噛みしめている。こういうことは、外から視ないと分からないものです。
私は、痛い場所だけを見ることをしません。全身を診て、なぜその場所に負担が集まったのかを一段掘り下げます。体には元々、自分を整える力があります。私の仕事は、その力の邪魔をしているものをどけることだと思っています。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 筋膜リリースは痛いほうがよいのでしょうか
いいえ、そうは考えていません。強い痛みを感じると、体は身構えて筋肉をこわばらせます。守ろうとする反応です。それでは、ゆるめたいところが逆に固まってしまう。「痛気持ちいい」よりもう少し手前、「気持ちいい」を目印にしてください。ご自宅でされる場合はなおさらです。
Q2. 自律神経の不調でも、体からアプローチする意味はありますか
意味はあると考えています。姿勢と呼吸と神経のはたらきは互いに影響し合うため、体の側から入り口を作ることができます。ただし、体のケアだけですべてが解決するとは申し上げません。発熱、体重の急な変化、しびれ、強い動悸などがある場合は、まず医療機関でご相談ください。私どもは、そのうえでできることをお手伝いする立場です。
Q3. どのくらいの間隔で通えばよいですか
お体の状態と、お仕事や生活のリズムによって変わります。初回にお体を診せていただいたうえで、いくつかの選択肢をお示しし、ご自身で選んでいただく形にしています。当院は自費施術専門ですので、費用のことも含めて先にお伝えします。ご納得いただけないときは、お断りいただいてかまいません。
ご相談ください
もし今、この記事を読みながら「自分のことだ」と感じた方がいらしたら。まずは、上のセルフケアを2週間だけ試してみてください。それでラクになれば、それがいちばんです。
試したうえで、まだ何かが残るようでしたら、一度お話を聞かせていただけませんか。何が起きているのかを一緒に整理するだけでも、次の一手が見えることがあります。
緑ヶ丘鍼灸整骨院
神奈川県厚木市王子1-1-21-101
☎ 0120-228-814
受付:平日13〜19時半/土9〜13時・15時半〜19時半(日・月定休)
※自費施術専門
検査で異常がないと言われた体にも、その人なりの理由があります。それを一緒に探すところから始めさせてください。
この記事を書いた人
谷貝智宏(やがい ともひろ)
緑ヶ丘鍼灸整骨院 院長/神奈川県厚木市鍼師・灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師。順天堂大学スポーツ健康科学部を卒業後、日本鍼灸理療専門学校・日本柔道整復専門学校で学ぶ。学生時代、プロ野球選手を支えるトレーナーの仕事に憧れ、「プレーヤーではなく支える側」としてこの道へ進みました。オリンピック・プロスポーツ選手のケアに携わったのち、地元・厚木で開業。この29年で、のべ25万人の方のお体に触れてきました。
痛みのある場所だけを診るのではなく、なぜそこに負担が集まったのかを全身から探す施術を続けています。当院は自費施術専門です。
この記事の監修者
緑ヶ丘鍼灸整骨院 院長
国家資格保有(柔道整復師・鍼灸師)|臨床29年・延べ25万人
厚木市で開業して25年。肩こりや腰痛、自律神経の乱れ、姿勢のお悩みなど、これまで多くのご相談を受けてきました。自費診療専門の院として、その場しのぎのケアではなく、お一人おひとりのお身体とていねいに向き合うことを大切にしています。「これは相談していいのかな」という段階で、どうぞお気軽にお声かけください。
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